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誰か人生を教えてください・・・


by maple_r

壊れる男たち -セクハラはなぜ繰り返されるのか- / 金子雅臣 (岩波新書)

 小説では、無いのだが。

 話題になっているので読んでみた。東京都で労働相談窓口に携わっていた人の、窓口に相談に訪れた人を考察したドキュメンタリーである。
 セクハラ被害を訴える女性被害者と、あれは全て合意の下であったと抗弁する男性加害者。セクハラ抗議の事例を紹介したあと、筆者の考察が入る。

 オレ自身が読む前に、タイミングで会社の後輩に先に読ませることになった。
 先ず、後輩K(♂29)。労働力はアジアの低賃金の人間に任せればいい。高所得者は働く必要は無い、資本を使えば良いのだ、と主張する帝国主義者。
 「セクハラする方はする方でダメだけど、オンナもさわらせすぎ。こんなにさわらせたら、オトコも勘違いしますよ」

 次はバイトの女子N(♀25)。父親は国立大学の元教授。今は退官。母親はフェミ系市民団体に属する左寄りの人。そして兄貴は引きこもりニート。以前、引きこもり小説であるところのNHKにようこそを貸したら、数十ページを読んだところで、「こんな本を貸すなんて信じられない! もう、捨ててやろうと思いましたよ!」と、えらくご立腹だった女子。
 「電車の中で、こんな典型的なセクハラオヤジがいるんだーって、声を出して笑いそうになっちゃいました。でも、こんな話はいくつも読んでも意味無いので、半分読んだところで返します」

 オレの感想であるが、セクハラ加害者に対しては単純に憤りを覚えた。どうしてそこまで女子の意志を無視して自己の妄想の世界に走り込むことが出来るのか。
 セクハラ事例以外の本編でも、後半の考察部分では納得出来ない部分が多々あったがね。

 とりあえずこの本を読んで考えたことは、日本の家庭の女性は自分の血縁者の二人称を、自分の子供の視点で呼ぶことがデフォであり、例えば女性Aは、自分のダンナを「おとうさん」と呼び、自分の父親は「おじいちゃん」、母親は「おばあちゃん」となるのである。
 これは、女性に限ったことで、男性には関係のない事象かと思っていたがさにあらず、男は呼称では無く、位置づけでこういうことを行っているような気がするのだな。

 つまり、自分の女房に対して、その位置づけを恋愛対象から母親へとシフトするという。
 
 家庭は母親に守られた聖なる領域。それは崩れるべくもない。
 そして会社は恋愛の場所。家庭と切り離し、自分が男になるべき場所。

 こういった錯誤が、セクハラの全てのような気がしないでもない。

 元々、この本で語られているような極度のセクハラ加害者は、常軌を逸した状況錯誤があるわけであるが。
 例えば、女子の視線を感じる。この女子は、オレを見ている、オレに気があるに違いない。ところが、この女子は、鼻毛が気になって仕方がないだけかもしれないのだ。
 
 犯罪者は、自己を奮い立たせるために、全ての状況を自己に優位な方向へ思いこむらしい。自分が見られていることを、自分が恥ずかしいという負の方向で考えることが出来ず、惚れられているという正の方向でしか考えられないのは、犯罪者及び予備軍の思考なのである。

 注意したい物である。
by maple_r | 2006-05-01 00:59 | 小説