クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い / 西尾維新 (講談社ノベルス)
2005年 11月 05日
世の中にどうしてこれだけのカップルができるか、恋人同士が成立するか、
その理由について思考したことはあるかね?
だっておかしいじゃないか。自分が好きな相手が自分のことを好いてくれているなど、
そんな好都合なことがそうそう起こり得るはずがない。
世に能力のインフレを引き起こしたのはドラゴンボールだと思う。
強い敵に勝っても、さらに強い敵が現れる。そして、それに勝ってもさらに強い敵。
それまでのマンガでは、初期段階で闘った相手でも、最終的にザコに成り下がることは無かった。
ホセ・メンドーサと闘った矢吹でも、力石のことは今でも称えられているし、
花形は生涯のライバルだった星飛雄馬、
エビ反りハイジャンプなんちゃらとつけた侍ジャイアンツは、能力インフレを先取りした時代読みマンガだったか。
マンガ世界以外では、たとえばクルマのグレード。
トヨタ・クラウンとか、最初は高級グレードがデラックスだった。
それが、スーパーデラックスとか、スーパーサルーンとか、ロイヤルサルーンとか。
結局行き詰まってそういう名称を使わなくなった。
上に上を作ろうとすることは、非常に難しい命題なのだよ。
講談社メフィスト系作家は、能力インフレが大好き。
清涼院流水は、JDC(日本探偵協会だったっけ?)とかいうのを作って、超・能力を持った人ばかり集めてる。
この西尾維新も、同じ。
数時間で数千万円の価値のある絵を描き出す画家、
常人の数千倍の味覚を持っているためとびきりの料理を作れる料理家、
アメリカの天才中の天才を集めた、自分で能力を高めたいがための集団でトップ7に数えられた学者、
未来を見通せる超能力者に、
コンピューティングで不可能は無い技術者。
そんな人が集まった孤島で起こる殺人事件。
作者が背伸びをしながら綴る作品に、面白いものは無いのだ。
と、物語の半分までは思っていたのだけれど、
最後の最後、後日談とかを抜きにして考えれば、これは面白いと言って良いのかもしれない。
少なくても、竹本健治の初出時というのは、こんな感じだったのだろうか。
もちろん「匣の中の失楽」ね。
友達にはなりたくないけど、ちょっと気になる。何やってるんだろう、そう思わずにいられない
そんな人の作品だ。
とりあえず次を読んでみないと結論は出ない。
by maple_r
| 2005-11-05 22:49
| 小説